CONCEPT STORY
「未来を、照らそう。」
その不思議な町は、丘の上にあります。
その丘の一番てっぺんには、
小さなオレンジのグラデーションが美しい、朝焼けのような、夕焼けのような、
灯火がゆらゆらと揺れている時のような、そんな色をした郵便ポストが建っています。
そのポストは、普通の郵便ポストとは違うことを、町に住む人達は知っています。
実は、そのポストに投函した手紙は、1年後に自分の元へ返ってくるのです。
その町の住人たちは、
1年後の自分に宛てて書いた手紙を、年に何回か、そのポストに投函します。
何でもない日に、
未来の自分へ、
「元気でやってるか?」とか、
「夢は叶ったか?」とか書く人もいれば、
年始めや年の終わりに、
「よく1年頑張ったね」とか、
「おつかれさま」とか、未来の自分に労いの言葉をかける人もいます。
時には、失恋した日や、頑張って取り組んだプロジェクトが大成功で終わった翌日に、
その時の気持ちを手紙に書いて、送る人もいます。
もうひとつ、その町に住むみんなが知っていることがあります。
それは、そんな手紙を書く時と、
1年後に、その手紙が届いた時に、
なぜだかとっても幸せな気持ちになるということです。
もしかすると、未来を想像しながら手紙を書くというのは、
未来が今より良くなっていたり、平和で、幸せに包まれていることを望んでいるからこその行いで、
それを書いている瞬間と、書いたものが届いた瞬間というのは本当は、
その希望や幸せに触れている瞬間、だからなのかもしれません。
未来がどうなっているかなんて誰にもわからない。
だったら今は、思う存分希望や、幸せで満たしてしまおう。
未来の自分へ手紙を書くことは、
どうやら未来を希望や幸せで満たすことのようだと、
みんなはなんとなく無意識に、わかっているのかもしれません。
そんな手紙を投函できるポストのことを、いつからか皆こう呼ぶようになりました。
ともしびポスト
そんな上手いことを、いつか誰かが言ったそうな。
そんなわけで、一風変わったポストがあるその町は、
「未来の自分へ手紙を書く」なんて、ちょっとロマンチックな文化がある町なのです。